開幕を告げる星
「4年ぶりかしらね」
先程より事は落ち着いて、今は炎の中でくつろぐ葉とアンナとホロホロと、そして。
「それだとオイラとは8年ぶりだっけな」
いつもより柔らかい表情のアンナといつも以上にゆるく笑う葉に、若干ホロホロは引き気味だ。
ていうかこの和やかすぎる雰囲気はなんなんだ。
「それぐらいかなぁ。でもまた二人に逢えて嬉しい」
ホロホロには知りえぬことのない他愛もない話をして笑い合う三人。正直このと言う少女は一体何者なのか今すぐに聞きたい所だったが、それよりも今はこの場から逃げたい気持の方が大きくて。
完璧に三人の世界に入っているので気づかれることなく安易に抜け出すことに成功する。
中庭に繋がっている縁側に腰を下ろして夜空を眺めた。天気が良くても自分の住んでいた所より東京の夜空は星が見えないけれど、それでも視線は上を向いたまま、
まるで何かを待っているように外さないでいる。
不意に背後からミシッと古い木の床を踏みしめる音が聞こえ視線を後ろへと向ける。
そこには意外にも先程の少女、が立っていてホロホロは少し驚いて目を大きくさせた。
「すみません。…あの、なんていうか説明するタイミング逃しちゃったので。」
そう言ってまた一歩近づいてホロホロの隣に立つ。
「隣いいですか?」
「あ、…どぞ」
そっとその場に腰を下ろすを横目で見る。月明かりでうっすら照らされている黒髪が輝くのが見える。
遠目で見ていた時は幼い顔立ちのだったが、間近で改めて見ると整っている彼女の顔は人形の様に綺麗で、少しみとれてしまう。
「私、って言います。あなたと同じシャーマンです」
ゆったりと喋り始めたの声はどこか意識の飛んでいたホロホロを引き戻させた。
「幼馴染みなんです、私と葉兄。それでアンナお姉ちゃんとも仲良くなって」
ふふ、と笑ってどこか嬉しそうに話す。
「私の家は昔から麻倉家に仕え護衛をつとめてきた一族で、私がここに来たのは麻倉の後継者の葉兄と許嫁のアンナお姉ちゃんの護衛、それと――」
不意に喋るのを止めての視線がホロホロから夜空に移動する。
そろそろかと思っていたホロホロもそれに合わせて同じ様に空を見上げると、同時に夜空が真昼の様に明るく輝き始める。
次の瞬間、
青白く輝く巨大な彗星が空を裂く様にしてゆっくりと流れて行く。
「……シャーマンファイトで、葉兄がシャーマンキングになるように支えることです」
500年に一度のシャーマンファイトの始まりを告げる彗星ラゴウ
「…きれい」
ゆるりとした口調で呟くにホロホロも言葉を返そうと口を開いた刹那、隣でばたりと倒れる音。
「うお!?」
弾かれるようにホロホロの肩が跳ね上がる。慌てて倒れたの体を揺さぶったがだらりとして力無い様子。
「すー…」
どうやら寝てしまったようだ。
「ま、マジかよ…」
余程意識を保っているのが限界だったのか。少し声を張り上げてみても全く起きる気配はない。そこまで星が見たかったのだろうか。
何にせよ少女の事が少し理解できただけで、ホロホロは十分だった。
「とりあえず運ぶか…」
華奢なの体はびっくりするぐらい軽くて安易に持ち上げられる。そのままホロホロはアンナや葉がいる部屋へとを運んで行った。