小さな適合者
気味悪がられて誰にも愛されない私に
本当の居場所と家族のあったかさを教えてくれて、
ありがとう。
18歳
日本生まれの日本人の女の子。
彼女の特徴は薄茶色の髪と碧眼の瞳。日本人特有の黒髪黒目とは遠くかけ離れていて、一目で彼女を日本人とわかる者は少ないだろう。
の父親と母親はごく普通の日本人の為親の遺伝でそうなったわけでもない。
その為周りには気味悪がられ、あげく親にさえ愛されることなく捨てられた。
そんな彼女を救ったのは、自身の並外れ過ぎのプラス思考。
どんなときでも前向き思考の彼女は、最早プラス思考を越して良い意味で図太い。
そのおかげで今まで一人でやってこれたといっても過言ではないのだが。
今日は久しぶりに外にでてみた。そろそろ食べるものも無くなってきちゃったしたまには外にでて息抜きしたいし。
ふらふらと歩きだして30分程。通りかかったのは殺風景な公園。そこで小さな子供達が走り回って楽しそうに遊んでいて、
しばらくその様子を見つめていた。
ふと一人の子供が私に気づいてピタリと動きを止め、それを見て他の子供達もこちらを向いた。
「あの人お母さんが近づいちゃだめって言ってたひとだよ!」
その中の女の子が私を指差して大きな声でそう言うと、皆一斉に「逃げろー」なんて言ってどこかへ走っていってしまった。
苦笑した。
まさかあんな小さな子供にまで言われるとは思わなかったな。
誰もいなくなった公園はさっきよりも殺風景になっていて、私は丁度座れる高さの大きめの石をみつけそこに腰を下ろした。
どれくらい経ったのか。なんだか気持良くてついうとうとしてしまった。そういえばまだ買い物行ってなかったっけ。
よいしょと足に力を入れて立ち上がろうとしたとき、さく。と葉っぱを踏む足音が聞こえて、少し耳をすますとそれがだんだん自分に近づいているのがわかった。
もしかしたらさっきの子供達の親が来たのかもしれない。
おそるおそる顏を上げて、もう目の前にいたその人の顏を見て私はほっとした。
「テメェが適合者か…ガキじゃねぇか」
そこにいたのは私と同じ歳くらいの男の人で、少なくともさっきの子供達の親ではないと思ったから。
「おい聞いてんのかチビ」
初対面にも関わらず人の気にしていることをグサリと言うその人に私はなぜだか悪い印象をもたなかった。
「あ、ごめんなさい。綺麗だったのでついみとれちゃって」
冗談のつもりで言ったけど綺麗な顏立ちなのは本当だった。さらさらの長い黒髪を高い位置に一つに縛ってポニーテールにしていて、一瞬男の人か女の人かわからなくなる程。多分日本人の人かな?
綺麗な顏と言われたのが気にくわなかったのか男の人は少しムッとした顏をして私を睨んだ。
「あはは、冗談です。……で、適合者ってなんですか? 私全く身に覚えが無いんですけど」
そう言っておどけたように笑って見せると男の人はものっすごく面倒くさそうな顏をして、しまいにはチッと舌打ちをされてしまった。
今日は日本へイノセンスの回収に向かった。
ヘブラスカが言うには既に適合者がいるらしく正確には回収ではなくそいつを連れてくることだったが、
いたのはちっせぇガキ。(これが俺と同じ歳なのがありえない)こんなにひょろひょろで小さいやつが本当に戦えるのだろうか。
アクマを倒すのはイノセンスの力だがイノセンスを使う者にも多少の体力やら筋力やら必要だと思う。
自分の知っている中で一人女のエクソシストはいるがそいつはチビでもないし華奢過ぎる体でもないし運動神経はいいだろう。
一通りエクソシストの説明をし終えるとそいつは難しい顏でなにやら考え事をしているのかうつ向いた。
そして少しの間をとって顏を上げた。
「つまり私の持っているイノセンスとかいうのが必要ってこと?」
「適合者のお前もだ」
そう言うとそいつはうーんと唸り声を上げてまた考え込んだ。
が、さっきより直ぐに顏をあげて気持悪いぐらいにこにこしながら俺を見た。
「わかった。私ついてくよ」